「歯周病」は歯を失う最も一般的な原因です。歯周病は、成人の約80%がかかる疾患であり、むし歯と並んで歯科の主要な病気の一つとされています。特に年齢が上がるにつれて、歯周病のリスクは高まります。50代を超えて歯を失う人の半数以上が歯周病が原因であることが明らかになっています。また、抜歯の主な原因の約40%が歯周病であり、むし歯を上回って最も多い原因となっています。


歯周病の原因は「プラーク内の細菌」です。歯周病は、プラークと呼ばれる細菌が歯ぐきに感染することで引き起こされます。最初に感染が起こると、歯ぐきに炎症が生じ、その後細菌はセメント質、歯根膜、歯槽骨などの組織に感染を広げていきます。


歯と歯ぐきの間に付着したプラークが原因で、歯ぐきに炎症が起こります。この初期段階を歯肉炎と呼び、「歯ぐきが赤く腫れぼったい」「歯ぐきから出血する」といった症状が現れます。

ただし、歯肉炎は歯ぐきに限定される炎症ですので、この段階で適切な治療を行えば歯ぐきを元の健康な状態に回復させることが可能です。

歯ぐきの炎症が内部の組織まで広がると、次に歯周炎が進行します。歯周炎は以下の3段階に分けられます。

軽度歯周炎(歯周ポケット:3~5mm)
歯周病菌の感染が歯ぐきの内側まで広がり、歯根膜や歯槽骨の破壊が進み始めます。

中等度歯周炎(歯周ポケット:4~7mm)
歯槽骨の破壊が進行し、歯が少しずつ揺れ始め、食事が噛みにくくなります。

重度歯周炎(歯周ポケット:6mm以上)
歯槽骨の半分以上が破壊され、歯が非常に揺れ動き、食事も困難になります。また、膿が歯ぐきから出る、口臭が強くなるといった症状も顕著に現れます。

歯の脱落
歯周病によって、歯を取り巻く組織の破壊が進むと、最終的に歯を支え切ることができず、自然に脱落してしまいます。


歯周病菌や炎症によって引き起こされる物質は、歯ぐき内の血管を通じて体全体に広がります。最近の研究で、これらの細菌や物質が動脈硬化、糖尿病、心臓疾患、脳梗塞、アルツハイマー病などの様々な全身疾患を悪化させる要因の1つであることが明らかになっています。

また、妊娠中の女性では、歯周病が低体重児の出産や早産のリスクを高めることもわかっています。ですから、歯周病は口内の問題だけでなく、体全体の健康にも影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。


パノラマX線検査
歯から顎の骨まで、口の状態全体を評価するために行います。

歯周ポケット検査
歯周病の進行によって生じた歯周ポケットの深さを測定します。


歯磨き指導(ブラッシング) 
プラークコントロール(ブラッシング)は、歯周病を改善するために最も基本的な治療法です。病原性のプラークを除去しながら口内の細菌レベルを正常化し、歯周病の進行を防ぐための環境を整えます。

プラークコントロールは、ご自宅での歯磨き(ホームケア)と、クリニックでの専門的なケア(プロフェッショナルケア)を両方継続することが非常に重要です。当院では、担当の衛生士が通常のクリーニングと一緒に、ブラッシングの指導や家庭でのケアのアドバイスを提供します。

歯肉縁上スケーリング(歯ぐきより上の歯石除去) 
長期間放置されたプラークは、唾液の成分によって歯石へと変化していきます。歯石は通常の歯磨きでは除去できず、表面の凹凸は細菌の温床となり、歯周病の悪化を促します。そのため、歯周病治療では専用の器具を使用して、歯面に付着した歯石を徹底的に取り除きます。

根面デブライドメント(歯ぐきより下の歯石除去)
歯石がさらに放置されると、歯ぐきの内側の歯根面にも付着し始めます。根面デブライドメントでは、専用のツール(キュレット)を使用して、歯根面に付着した歯石やポケット内の感染物質を丁寧に取り除きます。そして、歯根面を滑らかにし、プラークや歯石が再び付着しにくい環境を整えます。


歯周外科処置 中程度から重度の歯周病の場合、歯周外科処置が必要になることがあります。この治療では、麻酔を使用して歯ぐきを切開し、通常の治療では取り除くことができない深部のプラークや歯石、感染物質を取り除きます。